生前贈与と遺贈の違い| 相続対策としての効果や選び方のポイントとは/湘南なぎさ合同事務所

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生前贈与と遺贈の違い| 相続対策としての効果や選び方のポイントとは

相続が始まると、亡くなった方の財産は子どもなどの相続人へと移転します。財産の取得に関しては相続人同士で争いが起こることがありますし、相続税の負担が大きくて困ることもあります。この問題への対策として贈与をしたり、遺贈をするために遺言書を作成したりすることもあるのですが、これらの手段は上手く使い分ける必要があります。

ここで生前贈与と遺贈について説明し、違いや選び方を解説しますので、相続対策を検討している方は参考にしてください。

生前贈与について

「生前贈与」は贈与者が亡くなる前、つまり相続を意識して先に財産を贈与しておく行為をいいます。一般にいう「贈与」と変わりはなく、相続対策としてする贈与を区別するために生前贈与という呼び方をしています。

そして贈与とは無償で財産を譲渡する行為のことで、財産を与える方を贈与者、財産を受け取る方を受贈者と呼びます。与える財産の内容に制限はありません。家屋でも宅地でも、現金でも、株式でも、自動車でも、性質上他人に譲ることができるものであれば広く贈与の対象とすることができます。

贈与をした場合、当然ですが、贈与者の財産はその分少なくなります。これは遺産が少なくなることも意味しており、相続人が受け取れる遺産も少なくなります。相続だと身分関係に基づいて一定の方しか遺産を取得できませんが、贈与は契約に基づく行為ですので当事者間で約束をすれば身分関係問わず財産を与えることができます。

なお、このときは与える財産の価額に対応する贈与税が課税されます。

生前贈与による相続対策の効果

生前贈与をすれば遺産が少なくなりますので相続税の課税が少なくなります。また、遺産分割の対象となる財産も少なくなり、遺産分割協議を円滑に進めやすくなります。相続対策としての効果を整理したのが下表です。

生前贈与による対策の効果 説明
相続税の節税ができる 【基礎控除を活用した生前贈与】
贈与税では年間110万円の基礎控除が使えるため、この範囲内なら非課税で財産を与えることができ、相続税の課税も回避できる。
※相続直前など、一定期間内にされた贈与は相続税の課税対象になることには要注意。
【特例を活用した生前贈与】
特定の関係性、特定の目的でする贈与については一定額まで非課税にできる特例もいくつかある。この特例で、まとまったお金を非課税で贈与でき、その分相続税の課税も回避できる。
遺産分割すべき財産を減らせる 遺産が多いと相続人らが協議すべき事柄も増え、大きな負担になってしまう。生前贈与をしておけば遺産分割協議もシンプルになり、残った財産についてのみ話し合えばいい。特に取り扱いが難しい投資用の不動産や経営目的で所有する株式などは相続人に任せず所有者が対策を講じておくことが望ましい。
特定の人物へ確実に財産を渡せる 相続まで待っていると誰が何を取得するのかが被相続人にはわからないが、特定の人物に引き継いでほしい財産があるときでも生前贈与なら受け取ったことの確認ができる。また、名義変更等の手続も一緒に進めることができ円滑に移転できる。

遺贈について

次に「遺贈」について説明します。こちらは遺言の内容に沿って無償で財産を与える行為をいいます。結果的に、贈与と同じく対価の支払いなく財産の所有者が移転することになりますが、遺贈が実行される時点では当該財産の元所有者は亡くなっています。

また、遺贈を行うには事前準備として遺言書の作成が必須です。遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言などの種類があり、それぞれ作成要件も異なりますが、有効に作成された遺言書であれば効果に差はありません。

なお、このときは与える財産の価額に対応する相続税が課税されます。

遺贈による相続対策の効果

遺産分割協議で遺産を取得するのは相続人です。亡くなった方の夫や妻、子どもなどが優先的に取得し、子どもがいないときには親、親もいないときは兄弟姉妹、といった流れで相続できる人物が変動していきます。

相続人になれる人物は法律で制限されており、特に親しい仲にあった人物でも特定の身分関係になければ相続人にはなりません。ただ、遺贈をすることで相続人以外の第三者にも遺産を受け取ってもらうことができます。

下表に相続対策としての効果を整理します。

遺贈による対策の効果 説明
相続人以外にも財産を渡せる 遺贈であれば相続人にも相続人以外にも遺産を与えることができる。特定の財産を指定して与える特定遺贈や取得割合で指定して与える包括遺贈がある。包括遺贈であれば相続人以外でもその割合で相続人と同等の権利義務を取得する。
遺産分割すべき財産を減らせる 特定遺贈によれば遺産分割をすべき対象が少なくなり、その分遺産分割協議もシンプルになる。
ただし包括遺贈による場合は単純化するとも限らず、第三者が遺産分割協議に参加することもある。
相続まで自分が財産を所有できる 遺贈の効力は相続開始まで生じないため、相続開始後の財産移転は予定しつつも、生前は遺言者がその財産を使い続けることができる。

生前贈与と遺贈の比較

生前贈与と遺贈はいずれも財産を他人に渡す行為ですが、いくつか違いがあります。

生前贈与 遺贈
財産を渡す時期 ・贈与者が生きているうち
・契約で任意のタイミングを設定できる
・遺言者が亡くなってから
課税される税 贈与税
※例外的に相続税も課税
相続税
合意の必要性 受贈者との合意が必要 受贈者の合意が不要
手続方法 ・贈与契約を成立させれば良い
・口頭でも契約は成立するが、書面を交わした方が無難
・遺言書の作成が必要
・法律に従い適式に作成されていないと無効になってしまう
撤回の条件 ・原則撤回はできない
・書面で契約を交わしたときは自由に撤回できない
・遺言書の破棄や訂正などで可能
・遺言書は後に作成した方が優先的に効力を生じる

なお、基本的には相続税の方が税負担は軽くなりやすいのですが、生前贈与でも上手く特例を使えば節税しながら財産を与えることができます。生前からじっくりと準備ができるため、生前贈与の方が工夫して節税効果を得やすいといえるでしょう。

選び方のポイント

生前贈与と遺贈のどちらを選択すべきか、考え方・着目すべきポイントはいくつかあります。

まずは「本人が渡したいと思うタイミング」を考えてみましょう。今すぐ渡すことに問題がなく、すぐにでも渡しておきたいと思うものであれば、相続開始まで待つこととなる遺贈ではなく生前贈与を選択します。
しかし、自宅として使っているなど今も所有権を持ち続ける必要があるものについては贈与ではなく遺贈を選択します。

また、「節税効果を狙うかどうか」も重要です。生前贈与の方が節税対策を取りやすく、早いうちから計画的に進めておくことで大きな節税効果を得ることも可能です。一方の遺贈では、なかなか大きな効果を得ることが難しいです。

生前贈与をすべきか、遺贈をすべきか、判断に悩むときは司法書士などの実務家を頼ることをおすすめします。また、この2つの選択肢に限定して考える必要はなく、家族信託などさまざまな手段も視野に入れるとより良い答えが出せるかもしれません。

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